喜村

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 私の大好きな作家さんが消えた。死んだ、ではなく、消えた、のだ。
 ネット社会になり、この現象を体感した人は多いのではないだろうか。
 今日も私はいつものように、その人の更新を楽しみにしていた。毎日夕方五時に定期更新をしてくれる作家さん。
仕事で疲れた心に、クスッと笑わせてくれる絵日記やブログを書いてくれて、私の仕事終わりのルーティーンとして、毎日読みに行っていた。

 エラーページは心がえぐられる。
存在しませんと、ホームページ自体が消えていた。
ネット回線の問題かと思ったが、そうではないらしい。
 作家さんのSNSに飛んでみる。そうしたら、かろうじて存在はしていた。
しかし、過去のタイムラインはほぼ消えていて、アイコンも真っ黒。固定されたタイムラインが一つだけ。

『ありがとう、さようなら』

 一体、なにがおこったの?
突然のことで頭が真っ白になった。
 情報収集をしても、なにが真実で何が嘘かがわからない。だって、本人じゃないから。
 別れというのは突然で、もっとも、ネットだけの繋がりが増えたせいか、こういった別れが極端に増えた気がした。
 過去のことは全て消して、意味深な文章だけを残し、突然消えて行く別れ。

 あなたは私のことを覚えてないかもしれない。
でも、私はあなたの作品に触れて、毎日頑張る糧になっていたのは事実。
 あなたにとって、私はただの一ファンなだけだったけど、その一ファンはたくさんいて、たくさんの支えられていた人もいたというのに。

 突然の別れで、スマホを握る手に、指先に力が入らない。
さようならは言いたくない。でも、一言だけ。
「ありがとう」
 私はあなたのタイムラインと同じ一言を無意識に口にした。


【突然の別れ】

5/19/2023, 10:14:10 AM