逆さまに落ちていく感覚は、そうそう味わえるものじゃない。
日常でそんな事があったら大事故だ。
だから〝アレ〟は人気なのかもしれない。
安全が保証されていて、なおかつ真っ逆さまに落ちていくスリルを味わえる、〝アレ〟。
カタカタカタカタ·····。
体が斜めになったまま空へと向かう。
鉄骨で出来た骨組や建物や森がだんだん見えなくなって、やがて空しか見えなくなる。
·····ガタン。
広大な敷地の、多分一番高いところでピタリと止まる。さぁ、いよいよ。
一拍呼吸を置いて、地上へ向けて一直線。
声が後ろへ流れていく。
風が顔に当たって痛い。
その勢いのままぐるりと回って、頭が地上に、足が空へ向く。
体が上を向いたり下へ向かったり、右に傾いたと思ったら左に急旋回。何が何だか分からなくなって、変にテンションが高くなる。後ろの席からは壊れた笑い声。
最初にコレを発明した人はどんな人なんだろう?
ジェットコースター。
安全が保証された恐怖は楽しいと、最初に気付いた人は凄いと思った。
END
「逆さま」
12/6/2024, 3:17:31 PM