三羽ゆうが

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「俺悪くない。俺はちゃんと言われたノルマした」

「……はぁ…」

退屈そうに銃を磨きながら、男性のマフィアはそう言った。思わず女性のマフィアからため息が溢れ出る。この男、依頼人からのノルマは完璧にこなす。例えどんなノルマだとしても。

「アタシらも商売なのよ、あそこはよく使ってくれるし報酬も高いからちょっと位サービスってもんを覚えなさい」

「何で?ノルマはこなしてる」

「はぁ…」

こちらを見る事もせず淡々と言い放つ男に思わず頭を抱えた。確かに言ってしまえばノルマさえクリアすればそれで良いのだ。しかし今回の依頼主は10年来の付き合いで報酬も高値で…

「俺が」

「何よ」

「俺がいつもノルマしかクリアしない理由、分かる?」

「いいえ?」

「……𓏸𓏸は優しすぎる。この世界で依存は命取りだよ。だから俺でバランス取ってる。俺の不評がきたとしても、𓏸𓏸が居るからここには依頼が来る。…要は、𓏸𓏸が多少手抜いてもバレないって事」

「そんな…っ!手なんて抜かないわよ」

グッと男の顔が近くなって、おでこにこつんと彼のおでこが当てられる。そのままおでこが離れていったと思ったら、男の手が女頬を包み込んだ。

「…今日、熱あるのに仕事行こうとしてたでしょ。俺が代わりに仕事してくるから、ゆっくり休んでて」

「この位なら大丈夫よ、アタシ、」

「……病み上がりでもどーせ𓏸𓏸は仕事行きたがる。今日は俺が手抜いて仕事してくる。病み上がりでちょっとミスっても俺のせいにしていいから」

そう言うと男は隠し扉から外の世界へ出て行った。堂々と手を抜いて仕事をする宣言をされて苛立つのと、熱を見抜かれ心配してくれた事への感謝を天秤にかけた時。

「……最悪、…………だけど最高の相棒ね」

自分が彼に依存しているのには見て見ぬふりをした。


『最悪』

6/6/2024, 10:18:29 AM