[はやく、手をとって]
希望に溺れている。だんだん、体を包み込むように重く沈んでいく。光芒が差した水面から遠退いていく。そのまま目を閉じようとしたときに誰かに手を引っ張られた。目を開けると「…!!」
声にならずに口から小さな泡がコポコポと出るだけ。優しく微笑む彼の手を取る。
…!!目を開けると白い天井に白いベッド。大量の機械が自分の腕やら足についている。
そうか。思い出した。私と颯は散歩に出掛けていた。でも、事故にあったときに楓が庇ってそのまま帰らぬ人となってしまった。私は意識をそのまま失い植物状態になっていたのだろう。窓を見ると紅葉がひらひらとまっている。楓が私に手を振っているように見えた。段々、紅葉がぼやけて見える。
「楓、ごめんね。楓の分までしっかり生きるからっ」
「___一緒にいれなくてごめんな」
風に乗って楓の声が聞こえた気がした。
7/15/2024, 5:01:19 AM