summer

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0からの


0は植木鉢を上から見るかたち。
0は感嘆の声をあげる唇のかたち。息吹のかたち。
0は数と文字と記号の間のかたち。
0は、だから種のかたち。

0ははじまりのかたち。
はじまりはとても素敵で、食いしばる歯も硬く白い。
光に耐えられるほどに眼も強い。

私ははじまりたくて、はじまるところに居たくて、
でもしばらくすると大人の私が迎えにくる。
血管の浮いた手を差し出し、皺のある頬で微笑んで、
美しくない涙をこぼして、
0の私の光をわけて、と言う。
はじまりの私をポケットに入れ、
冷たい風の中を一人で歩いていく。

食いしばる歯は欠けて、
眼にはたくさん靄(もや)が見える。それでも、
風でにじんだ目の中に、ほら
七色の光があると言って、
年取った私は嬉しそうにする。
昔だったら愚かな年寄りだと断じたけれど
それを哀切に思い少し笑ってやる程には
0の私も年を取った。



2/21/2023, 1:24:21 PM