ただ君だけ
手を伸ばしたって届かないものに心惹かれるのは、きっと人間の性なんだろう。
本、アニメ、芸能人、YouTuber、、、etc 小さい頃誰もが憧れるような話は何時だって現実離れしている そういった今の自分では得られない理想や妄想が人を動かす原動力なのかも知れない。
小さい頃だと姉や兄に憧れて真似をすることあもあるかも知れない。 もしくは好きな戦隊モノのキャラや、アイドルがかっこよく見えて真似をするかも知れない。 そういった理想の積み重ねで大人になる一歩を踏み出しやすくするのかもしれない。
自分には双子の兄がいた。 自分と比べて優秀で勉強も運動も、人当たりだって良くて、どれも平均かそれ以下の自分は惨めだった。 親はやっぱりと言うか優秀な子供の方が可愛いみたい。やっぱり与えられた違いは大きくて、兄への劣等感と憎しみが募っていった。
それでも兄は兄だった。出来損ないの自分にも明るく笑いかけてつい浮きがちな自分を周囲の人達と馴染ませていった。 でも、勿論それは兄がいるから、兄がいなきゃ誰も相手にしてくれない。精々出来損ないの自分を哀れむだけだ。
そんなこんなな日々を過ごしたある日、僕と兄2人で買い物に行ったんだ。 普段は穏やかな道は何処か騒がしくて、不思議に思いながらも2人でスーパーへ向かう。 なんてことない日曜日だったんだ。 暴走車が僕達へと向かって来て「たまたま」車道側を歩いていた兄が死んでしまった。
聞きたくなかったよ。分かっていたんだ。それでもどうしょうもなくて、
「死んだのがお前だったら良かったに」
そう言われてしまった。 分かってる。兄が死んでしまって乱心してるのも、自分の方が命の価値が低いのも。
分かってるけど………それでも、、 辛かった
生前兄とは散々一緒にいたから出来たんだ すっと自分に馴染むように 簡単に
それから今の今までずッと君の真似をしているんだ。お兄ちゃん。
ただ君だけ、ただ君だけ僕を愛してくれたよね。
ただ君だけ愛されていたよね。
お兄ちゃん だからね、いいよね?、
成り代わったって
5/12/2025, 5:43:36 PM