江戸宮

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「せんせ、せんせぇ!みて、今日振袖の案内が届いて先生に選んで欲しいなっておもって持ってきちゃった!」

昨日の帰り、家の郵便ポストを覗いたら振袖の案内が入っていた。
私の地域では18歳ではなく20歳で成人式を行うらしいから、もちろん振袖を着れるのはあと数年かかるが。
どうせなら好きな先生に色だけでも選んでもらおうというそういう魂胆であった。

「振袖…?へぇ〜最近のってどれも可愛いのね」

そう言って私が持ってきた振袖のカタログを捲った。
そこには色とりどりの振袖を着てにこやかな笑みを称えている少女たちが写っていた。
今の”可愛い”に振袖を着た女の子の事が入っていない純粋な振袖だけの感想であれ、と願った。

「あ……これなんてどう?黒と白のボカシの地に牡丹とか桔梗とか日本ぽくて可愛んじゃない?」

先生が指さしたのは黒と白が基調の振袖だった。
帯までオシャレで、これに身を包んで門出の日を先生に祝って欲しいとおもった。

「黒は他の誰にも染まらないって意味があるし、きっと貴方によく似合うよ。…あれ、聞いてる?」


成人式、絶対黒い振袖を着よう。
……でも、先生と付き合えたりなんかしちゃったら白い振袖でもいいかもしれない。
あなたのいろに染まります、なんて先生が好きそうな言葉だなあ、なんて考えていた。


2024.1.10『20歳』

1/11/2024, 8:46:30 AM