お題『虹のはじまりを探して』
※久しぶりにあくねこ2次創作です。
書庫で整理をしていると、主様が現れた。
5歳の主様。
屋敷は久しぶりの主様が幼い子どもということもあってかみんなメロメロだ。お菓子を差し上げようとする執事が後を絶たなかった。このままでは主様の健康に関わるということでハウレスは心を鬼にして【鬼ごっこ】の鬼となり、日々主様に楽しんで運動をしていただけるように努めている。
ここでもハウレスが鞭役となっているので、俺は飴役。運動をして疲れた主様に気持ちよく休んでいただいている。
最初は寝室で寝かしつけをしていたけれど、目が覚めたときにひとりぼっちは嫌だと泣きだしたことがある。そこで俺は主様につきっきりになれるよう書庫で休んではいかがですか、と提案した。
主様に「目が覚めたら絵本を読んでいてもいいですよ」と言ったところ大きく頷いていた。
今日も鬼ごっこをたっぷり楽しんだらしい主様をお風呂に入れて、書庫のソファで寛いでもらう。トントンと胸を叩きながらゆったりとしたリズムで子守歌を歌っているうちに夢の中に入っていった。
その主様が、絵本を抱えて俺を見上げている。瞳は爛々と輝いていて、何か楽しい思いつきがあることを物語っている。
「ねぇフェネス」
「主様、いかがなさいましたか?」
すると主様は、
「にじのはじまりをみたい」
と言い出した。大事そうに抱えている絵本は虹の始まりを見つけに行く冒険譚。
「うーん、今日は晴れていて虹は出ていないと思うのですが……」
そこまで言って、いいことを思いつく。
「ハウレスに相談してみましょう。俺ひとりの力ではどうにもならないので」
「わあ……つめたくてきもちいいー!」
屋根からホースで水を撒かれて主様は大喜びだ。
「あ! 主様、虹が出てます!」
「きれいだねー……あれ?」
主様がきょとんとしている。それもそうだろう、輪っかの虹が出てきたのだから。
7/29/2025, 10:22:27 AM