雪を待つ
雪を待つ。これを越えれば春だから、と、信じていられる冷たい光。
手の冷たさはポケットで誤魔化して、じりじりする耳に耐えて、コンビニに入る。
ほぅ、と息を吐く。いらっしゃいませの声。暖を取りにきただけではないと言い訳するように、まっすぐ、なんとなく、あたたかい飲み物の棚を見る。別に、飲みたいものは無い。ガラス張りの外を見ても、雪は一向に降ってこない。雲の少ない、薄い色の空。風に揺れる街路樹の枝。
…模試の結果が、ダメだった。
入りたい大学。友達や家族。自分のやってきたこと。あともう少ししか時間がないのに。何がいけなかったのか。
雪が降れば良いのに、いっそ。雪が降ればいいのに。白く埋もれて仕舞えば良いのに。私だけがそこから芽吹かない春。
ペットボトルのレモネードを買って、コンビニから出る。ありがとうございましたの声。冷たい風に怯んでなんかいないと見栄を張って、足を止めずに出ていく。
はぁ、とため息をつく。レモネードをひとくち、ふたくち、冷めないうちに。
…あったかいや。
こんなに悪かった模試、今まであったっけ。
本番じゃなくてよかったや。…うん。
これを超えた春に、花を咲かせたいと思う。
12/16/2023, 11:09:38 AM