お題「10年後の私から届いた手紙」
私にできることは、恐らくもうないのだろう。
きっと誰も、私に期待なんてしていない。
私に、この世界で生きていく勇気なんかない。
ねぇ、もしも10年後にまだ「私」がいるのなら、何をしているの? つらいよ、助けて──
聞こえてくるのは、鳥の声。
見えてくるのは、太陽の光。
手に触れたのは──
「手紙……?」
おはよう。今日も、目が覚めたんだね。
体調はどう? ゆっくりでいいんだよ。
何事も、焦らないで。自分のペースでいいんだからね。
何もできない、なんてことないよ。
生きているだけで、偉いんだよ。
あなたの10年後は、今も生きてる。
「私」が、私を生かしてくれてるの。
おかげで、素敵な人と巡り逢えた。毎日が幸せです。
ありがとう、10年前の私。
視界が霞んでいて、文字が読めない。
「もう、これじゃまるで物語じゃないっ……」
私は、捨ててしまおうとしていたこの体を、手紙と共に抱きしめた。これ以上、ないくらいに。
10年後の私が、その先もずっと生きていけるように、私は「私」と共に生きていくことを、心に誓った。
2/15/2023, 12:51:46 PM