水晶

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『まだ見ぬ景色』

「少し急ぎでお願い!」
ホールの二人が洗い物をどんどん運んで来る。洗っても洗っても減らない皿の山に私は内心ウンザリしていた。
高校生になったらバイトをしようと、幼なじみの真奈と一緒に休日だけカフェで洗い物をすることになった。ところが今日も真奈は「用事があるから」と休んだ。

ふたりでやっても大忙しなのに、ひとりでこれを洗うだなんてもう出来る気がしない…。そんな私を見かねて、キッチン担当のオーナーが「少し手伝うわね」と来てくれた。すみませんと返すとオーナーが言った。
「ねぇ。あなたはどうして洗い場を希望したの?」

人前に出る仕事は自信が無いので、と答えると「この前一回だけホールに出で貰ったでしょう?帰り際にお客様があなたを褒めていてね。急に大人数で来たのにテーブルや椅子の用意が手際良かったし、声掛けにも心がこもっていたと。だからもしかしたらあなたはホールに向いているかもしれないわよ」

予期せぬ言葉に驚いたり嬉しかったり。
苦手だからと避けるばかりで無く、一歩踏み出してみればもしかしたら新しい何かが見えるかも知れない。

1/14/2025, 7:07:54 AM