「岐路」
「ただいまー!!!」
びっっくりした……!毎回のことなのにまだ慣れないな。
「やあニンゲンくん!!!うちの治安をきっちり維持しておいてくれたかな?!!」
まあ……っていうかそもそもここはあんたの家じゃないだろ。
「そんな冷たいことを言わずに〜!!!だがボクは分かっているよ!!!キミはボクのことが心配で心配で仕方なかったのだろう?!!素直じゃないねえ〜!!!」
いや、別にそこまで心配していたわけでもないけど。
「おやおや、そうかい……。ボクはキミのひとを見る目を見くびっていたようだね!!!ボクが無事で戻って来ることがあらかじめ分かっていたということは!!!」
「つまりキミはボクを相当信頼してくれているわけだね!!!とっても嬉しいよ!!!」
はいはい、そうですか。
……にしても、こいつ宛の逮捕状が出されたタイミングで本部に用事があったってことは、事情聴取かなんかを受けてきた可能性はあるよな。
と同時に、こいつがヘマをしたら、そのままどこかに閉じ込められて出てこられなかったかもしれないってことだったのか。
あんな普通の顔して家を出ておいて、しれっと重要な用事を済まして帰ってくるとか。自分はいまだにあんたのことがよく分からないよ。
「そういえば、一緒にいながらあまりしっかり言えていなかったことがある!!!」
言えていなかったこと?
「そう!!!キミにちゃんと伝えたいこと!!!」
「ニンゲンくん!!!キミの全てに感謝する!!!今までもこれからも、本当にありがとう!!!」
「もしキミがボクの頼みを聞いてくれなければ、いや、キミがいなかったとしたら、ボクは、ボクの宇宙は!!!もう既に亡き者になっていたかもしれないのだよ!!!」
「キミの協力のおかげでこの美しい宇宙を守ることができた!!!まだまだ時間はかかりそうだが、事件が解決し次第徐々に復旧を進めるよ!!!」
「……というわけなので!!!ニンゲンくん、改めてよろしく頼むよ!!!」
……えーと、まあ、こちらこそよろしく?
「えへへ!」
「ん、でも、この言い方だとあまりに一方的だね。」
「本来であれば立場上このようなことを言うべきではないのだが……。」
「もしキミが生きていく上で、何かを選ばなければならなくなった時───キミが重要な岐路に立たされた時、ボクはキミを幸せな方へと導きたい。いや、導かせて欲しいんだ。」
急にどうしたんだ?
「あまりキミは話したがらないが、キミ自身の過去において、自分の意図しないうちに冷たく苦しい道に置かれていた。」
……。
「長い時間をかけて、やがてキミは暖かく楽しい道の選び方を忘れてしまった。だから今でも自分を蔑ろにしがちなんだ。」
「ボクは宇宙の恩人であるキミに苦しんでほしくはないのだよ。だから、だからね。これからはキミは自分のしたいことを、何にも諦めないでね。もしかして不安かい?大丈夫だよ!」
「だってこのボクがいるんだから!!!」
……ありがとう、頼もしいな。
「それほどでもあるね!!!」
「さて!!!そろそろお腹が空いてきたよ!!!昼ごはんを食べようか!!!」
「キミは、なにが食べたい?」
6/9/2024, 12:44:10 PM