微塵子(ミジンコと呼んで)

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【部活帰り】

さっきまで眩しかった太陽が
水平線に消えていく
そんな時間
私はある人に会いに行った 

そこは旧校舎
こんな時間でもそうでなくても
人は寄り付かない
その旧校舎にある空き教室に
私は向かった

一つの人影があった
ロングヘアーをたなびかせてその人はいた

「、、、」

彼女は栞
普通の高校生
平凡で、普通で、
飛び抜けて大きな個性も無く
クラスでも目立つような人ではない
私の先輩だ

「、、、」

その人には一つだけ秘密がある
私しか知らない秘密

「、、、帰らなきゃ」

そう呟いてこちらを見た
そしてニコッと笑った

栞は私の待つ廊下に出て
にやにやしている

「また会いに来たの?
先輩の秘密を知って思い上がっちゃってない?」

すこし意地悪な口調で話しかけてくる
私は少しだけ笑顔になれた
部活で疲れていた足ももうすっかり元気だ

【校庭】

「、、、いつも見てますよね、夕日、
好きなんですか?」

すこしキョトンとした顔をして
また意地悪に笑った

「そう見えた?」

栞は軽い足取りで私の前を歩く
タンタンッっといった擬音が似合いそうだ

栞さんとは帰り道が違う
だから正門でさようならをする
そこまでの時間が私は好きだ
栞さんと一緒にいれるから、、、
本人には言えないけれど

【正門】

「後輩ちゃんっ」

少し大きな声で私を呼ぶ

「また会いに来てくれる?」

少し照れたような表情でこちらを見てくる
、、、夕方だから、気のせいかもしれないけれど

「、、、もちろんです!
栞さんと話すの楽しいのでっ」

好きだからなんて言えない

「、、、こんな私に、?
ふふっ 後輩ちゃんは優しいね」

だって栞さんは

「じゃあ、また会おうねっ!」

だって、

「はい、また会いましょう、優しい幽霊の栞さん、」

もう何年も前に死んでしまっているんだから、

10/12/2024, 11:58:28 AM