『セーター』
この時期になると、セーターを編む。
一目一目針棒を動かして少しずつ編み上がる様は、まるで曼荼羅か魔法陣のようだ。
アンデルセンの物語では白鳥に変えられた兄王子たちを、末の妹姫が編んだイラクサの鎖帷子でもとに戻していたっけ。
もちろん、やさしい気持ちやあたたかい想いが籠められることも多いだろう。
むしろそちらが本来のものなのだ。
そういえば。
プレゼントされたセーターをよく見たら髪の毛が編み込まれていた、なんて都市伝説めいた話も聞いたことがある。
酷いなぁ。
アレは私の渾身の作だったのに。
白鳥の王子たちは本当に無事に地上に降り立ったのだろうか。
空中で鳥から人間に戻った者はいなかったのだろうか。
一目一目針棒を動かしながら夢想する。
空から落ちてくる美しい半鳥の王子。
あの人も早くこちらに落ちてくればいい。
そして私も――『落ちていく』
11/25/2024, 9:16:50 AM