はるさめ

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私は彼女のお気に入り。

何にも代わり映えのない日々を過ごして、
飾られた棚の上から過ぎ行く人々を眺め続けていたある日のこと。

とっても可愛いお客さまが訪れてくれたの。
それがあなた。

あの日のことは今でも鮮明に思い出せるわ。
お母さんにねだって、小さな手と身体いっぱいで私を抱き締めてくれた。
そしてお母さんと約束して、私を家に連れて帰ってくれたわね。

そこからの日々はとても楽しいものだった。
あなたの一番の友達として、おままごとに付き合ったり添い寝したり、時には好きな男の子の話を聞いたこともあったわね。
そのうちあなたは素敵な女性になって、おままごとや添い寝も今はもうしなくなってしまったけれど。
時々お風呂に入れてくれて、抱き締めてくれて、
お気に入りなんだって示すように大切にしてくれたこと、本当に嬉しかったの。

ああ、あなたのお父さんとお母さんが泣いているわ。
そうね、今日はあなたの結婚式だものね。
ただのぬいぐるみの私も、なんでかおめかしをしてあなたの隣に座っているわ。
お姫様のように綺麗なあなたの姿を、私も見ることができて本当に光栄よ。

ねぇ王子、私のお姫様をきちんと幸せにしてくれないと怒るわよ。

私をいつまでも大切にしてくれるこの子が末永く幸せでありますように。

2/17/2023, 10:31:11 AM