・夜の海
白い紙に気の済むまで思いの丈をぶちまける。
感情を吐き出された紙は酷く汚れていく。
汚し終え、一息つく。
少し冷静になり、目の前にある汚しきった紙を見直すと、つい先程まで自身が抱えてた感情の気持ち悪さに気づいてしまう。
「こんな物、見せるわけにいかない」
あまりのおぞましさにソレをぐちゃぐちゃに丸めてゴミ箱に捨てる。
しかしその行為に反するように己の内に燻る感情がまた強くなっていく。
見て見ぬふりをしても頭の中がその感情で支配される。
抑えたくて、苦しくて、でも伝えたくて、そうして結局、性懲りもなくペンにインクを補充する。
「……今度こそ」
次こそは見せられるほど綺麗な形にしてみせる、そう意気込んで私は紙に黒い海を作り直した。
8/16/2024, 5:50:46 AM