雪花

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友達に転校を告げられたのは、ある暖かい秋の日の午後だった。体調が思わしくなくて最近学校を休みがちだった彼女とは、今はクラスが違うけれど1年生の頃からずっと仲良くしていた。

彼女には、一生付き合っていかなければならないものがある。死に至るわけではなく、特に悪化するとも限らないが、生きている限り決して治ることはないものだ。

学校生活でも一応の配慮はされているが、大人数に対する授業ではどうしても個人の問題に完璧に配慮することは難しく、だからこそ彼女は私たちの何倍も神経を尖らせて授業に参加せざるを得なくなっていた。そのせいか、明らかに疲労が見えることも度々あった。自分のせいで他の人の練習を遅らせてしまうのではないかと考えて積極的に授業に参加するのを躊躇ったことが、ある先生には努力不足であるように映ってしまい、それ以来冷淡な態度を取られるようになったことも知っている。

何かあるたびに私や他の友人たちに心配されながらも決して授業を休むことはなかった彼女が、登校することさえ難しい今の状況はどれほど深刻なのか、自分でも薄々気づいていた。文化祭に向けた準備のために慌ただしく隣の教室と自分のクラスを行き来する中で、時間が止まったように佇む空席を目にする日が増えるたび、いずれこの学校を去る日が訪れるのではないかと覚悟もしていた。

だから、久しぶりに学校に姿を見せた彼女が、疲れたような笑顔を見せながらも迷いのない表情で通信制高校に転校すると言い切ったとき、自分の感情をすっかり脇に置いたまま「きっとそれが彼女にとって一番良い方法なのだろう」と腑に落ちた私がいた。最後の日も、きっと私は心からの笑顔で彼女を見送ることができるだろう。

でも、別れの日がいよいよ明日に迫った夜に自室でひとり思い出を振り返ったとき、自分の本心はそれだけではないとわかってしまった。彼女と他愛もない話をした帰り道が、笑いあった休み時間が、教室の窓際で互いの悩みを真剣に聞きあった放課後が、全て過去のものになる。転校してもスマホで連絡を取ることはできるし、今までより頻度は少なくなるだろうが会うこともできるのに、何かが失われてしまうようなこの感覚はいったい何なのだろうか。

行かないで、と彼女を前にしてなんの躊躇いもなく口に出せたら、自分の心だけは楽になるのかもしれない。

でも、そう願った先に彼女の幸せはないとわかっているから、幼すぎるその言葉を伝えるかわりに手紙を書くことにした。


【行かないでと、願ったのに】

11/3/2025, 4:04:47 PM