とうとうオレはやってしまった。
後悔の念にかられながら必死に走る。
体についた血の匂いなのか、それとも全力で走っている口の中から匂う血の味なのか。
そんなことよりも早く帰らなくては‥早く!
妻には知られたくない!
アパートの非常階段を駆け上がり、3階の踊り場を曲がった。
もう、限界か‥
急に足が重くなり、人に見られない所に隠れ呼吸を整える。
オレのこの姿を見たら妻はどんな顔をするだろうか?
「君と出逢って」オレはまともに生きたいと願った。
今は後悔しか無い。汗が目に入る。固く目を閉じ天を仰ぐ。呼吸は少しかるくなった。
もう少しだ!何としても妻より早く帰らなくては!
さっきより足は重いが、最後の力を振り絞る。
また血の匂いだ。後悔がオレを押しつぶす。
玄関を入ってシャワーを浴びたらいつも通りのオレに戻らなくては。知られてはいけない。
5/5/2024, 2:29:01 PM