「なんか、その空ぐちゃぐちゃだね。」
文化祭に向けて作品制作を進める友人に横槍を入れる。彼女の手は止まらないままで、私なんて見えていないようだった。
「まだ、未完成なの。」
「え?」
「この空はたぶん、描き終えられることはない。」
「それまたなんで。」
夕焼けになりかけた空に、やわらかな水色の絵の具がベッタリと重ねられる。
「空にはいろんな顔があるからさ、ずっと、しっくりこないんだ。」
「もう真っ暗だから、帰ろうよ。最近ずっとこればっか描いてるじゃん。」
「なんかもうちょっとで、わかってあげられるような気がするんだけどなぁ。」
それとなく彼女の周りに散乱した絵の具を片付けながら、筆を持つその手を目で追っていた。彼女は一体、何を躊躇い続けているのだろう。でもそんなの知ったところで、私が空みたいに曖昧な彼女を理解してあげられる日は来ないだろうから。
6/15/2024, 10:34:27 AM