冬至。

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どうしてずっと隣りに居れると思ってたんだろう。
どうして気持ちは変わらないと思い込んでいたのだろう。
どうしておれは…。

「きみは男だから」
目の前の男は視線を足もとに落としたまま誰に言うでもなくポツリとそう言った。
この人はおれの人間性が好きだと言ってくれた。
好きになる人は姿形には拘らないと以前話したときに言っていた。
何よりふたりで居るときの空気がおれは好きだった。
だから大丈夫だと思った。
いま思うとどこから来たのか分からないその自信を持って。
溢れ出して止まらないこの想いを思い切って言葉にした。
笑って受け止めてくれると思い込んでいたおれに突きつけられたのは拒絶だった。
「何かの冗談でしょう?」
ぎこちなく笑って視線を外す。
こんなこと冗談で言えるはずないじゃないか。
そんな雑な感情ではない。
彼の態度に失敗したと思った。
言わなきゃよかったと思った。
「そ…だよ。びっくりした?」
何とか笑って絞り出したその声は震えてなかっただろうか。
貼り付けた笑顔は歪んでいなかっただろうか。
その答えに目の前の男は、顔は未だ俯いてよく見えないもののあからさまにホッとしてる様子が見てとれた。
「驚かさないでください。びっくりしたじゃないですか」
少し笑って視線をおれの方に向けた。
そんな分かりやすく安心するなよと胸の奥に怒りが湧いてくる。
合わさっていた彼との視線を今度はおれが俯き加減に逸らす。
「そっちがウソだけどね」
その言葉に彼がまた動揺したような気配があった。
もう自暴自棄になってたのかもしれない。
どうなってもいいと思った。
一歩また一歩、彼の方に近付くと警戒したように身構えられる。
「そんなに警戒しないでよ」
表面上は笑っているのに泣きたくてたまらない。
「あんたのことが好きなんだ」
また一歩さらに彼の方へ近付く。
彼は固まったまま地面の方ばかり見て黙ったままだ。
そんな姿に腹が立つ。
「なんか言ってよ」
「僕たちは男同士で…そんなのありえない」
「あんたは姿形には拘らないと言ってたじゃないか」
「それでも男同士とは思いもよらなかった」
ポツリと消え入るような声で答える。
「だったら、おれがオンナだったらよかったの?」
近付いてその頬に手を添えると怯えるように身体が震えた。
逃がさないように視線を追いかける。
「オンナだったら付き合ってくれたの?」
言葉の勢いでそのまま彼のくちびるにそっと自分のそれを合わせた。
その瞬間に強い力で剥がされた。
心臓を鷲掴みにされたようだ。
痛くて堪らない。
どうしたらいいんだろう。
もう進むことも引くことも出来ない。
分かっているのはもう取り返しのつかないってことだった。
口に出してしまったら最後だなんてよく言ったものだ。
ただただずっと隣りに居たかっただけなのに。
それだけでよかったのに。
それ以上を求めてしまったのがそんなにいけなかったのか。
いまはただ一秒でも早くここから消えてしまいたかった。



                 (ずっと隣で)
        何か違う。短くまとめるの難しい。

3/14/2026, 9:44:37 AM