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▶100.「遠く....」
99.「誰も知らない秘密」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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イレフスト国 第三隊所属の国境線南部詰め所にて
「班長、すいません。見失いました」
「そうか…しかし相手は徒歩だろう?」
「はい、北への分かれ道の先にある村で聞き込みをしましたが、該当者と同じ特徴の者は見つかりませんでした」
「我々に勘づいたとしか思えん動きだな」

(そいつが、今回の容疑者なのか?)

王宮所属の施設から何かが盗まれたらしい。
古い研究施設で、詳細が分からない。
危険性も分からないから、最重要事案として動いている。

(それを持って初入国を申告する日陰者?どうもちぐはぐだな)

だが実際に、そいつは我々の前から姿を消した。
「相手の力量も危険性も分からないのに周囲の捜索を続けるには、班1つでは足りないな。隊長には、ありのままを報告するしかない。全員で詰所に戻る」


てっきり隊長から将軍に報告が行くのだと思ったら、任されてしまった。
いや、よく考えなくても、その通りだ。刻一刻と状況が変わっていく中で隊長が詰め所を不在にするわけにはいかない。

「入れ。将軍が直接報告を聞きたいそうだ。くれぐれも失礼のないようにな」

きた。がんばれ、俺の心臓。





隊長の見立て通り、将軍から、既に国全体へ薄く張った網に、該当者「シルバーブロンド」が最後に目撃された場所であるナトミ村周辺から重点的な捜索を重ねることと通達があった。これは引き続きという形で、南部が担当することで決定している。

深追いせずに泳がせている成果か、
ポツ、ポツ、と飛び飛びで目撃情報が入ってくる。

「北西、いや北北西に向かっているのか?」
「街道を通っていたら、こうはなりませんね」

地図に目撃情報のあった場所を書き込んでいけば、向かう方向が見える。

「なあ、最初がココ、次がココ、その次は、もうこんなに遠く....徒歩なんだよな?こいつ人間か?」
「こら、言葉づかいに気をつけろ」
「あ、すいません」
「しかし着眼点は良い。まさか夜通し移動しているのか?」

不気味な空気が流れていくのを止めるように、ノックの音が部屋に響いた。
「はい、どうぞ」
「失礼、技術保全課です。遅れて申し訳ない」

「はぁ、なんだよ…イテッ」
「どうぞこちらに。今シルバーブロンドの動きを地図にまとめていたところです。見てください。やつは、北西もしくは北北西に向かっているようです」
「どれどれ…ふむ、そのようで…っ!」
地図を辿っていった技術保全課の顔色が変わった。

「どうしました?」
「発端になっている窃盗があったとされる施設が、真っ直ぐ行った先にあるのです。こ、これは…何日程で辿り着くか予想できますか」

一気に空気が張り詰めたものに変わる。

「やつは人間ばなれした速度で移動しています。同じ速さで行った場合は7日ほどでしょうな」
「そんなに早く…もっと遠く....遠い日に来る出来事だと思っていました。いや、これは失礼。すぐに持ち帰らなければ。有益な情報をありがとうございました」

2/9/2025, 9:18:19 AM