ハル

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ふと、スマートフォンから顔を上げる。
顔にあたる空気を数時間ぶりに意識して、ああ、冷えたなぁと思う。

午前2時。
寝静まった世界は、私に現実を突きつける。

良い子は寝る時間だ。でも、私は寝られない。

ふと、勉強机の方に視線をやる。
横になっているから、机の上は見えない。
でも、そこにある膨大な参考書は見えなくたって私の心に重くのしかかる。

なぜ、こんなことになってしまうのだろう。
どうしていつもいつも逃げてしまうのだろう。

あと3時間で朝日は登る。
夜が明けたら学校に行かなければならなくて、
そしたら私は悪い子だとバレてしまう。

悪い子な自分は嫌だ。
そんな自分は受け入れたくない。
見たくない、見たくない。

スマートフォンに視線を移した。
膨大な文字が並ぶ画面を流し見る。
物語の世界には、こんな嫌な私はいない。

ああ、面白い。
楽しい。
手が止まらない。
止められない。

誰か、誰か私を止めてくれと、そう思う。
この腐りきった自分を立ち上がらせて、どんな苦痛にも耐えられるようにして欲しい。

そんなこと。
他人任せを願うとは、なんて自分は浅はかなのか。
自分で立ち向かい、乗り越えるしかないのに。

苦しい。苦しい。
この苦しさから逃れることができるのならば、
物語に溺れる方がどれだけいいか

面白い。
面白い。
手が止まらない、
止めようと思うことすら出来ない。

焦りも、自分自身に感じる失望も、午前2時の冷えた空気も全部頭の片隅に追いやって。

私は液晶画面を撫で続ける。


更けていく夜に
消えないあかりがひとつ。
逃げ続けた先に、何があるのか。
そんなことすら考えないまま。

深夜2時
良い子は寝る時間。
でも、私は寝られない。

1/26/2024, 12:29:05 PM