作家志望の高校生

Open App

ある休日の昼下がり。食後の心地よい眠気に揺蕩っていた俺は、電話の鳴る音に意識を浮上させた。
「ふぁ……誰だよこんな時に……」
寝起き特有の苛立ちを隠しもせずに愚痴を吐きながら受話器を取る。見覚えの無い番号だったので、セールスか、あるいは詐欺かと余計腹が立った。
『お、やっと出た!元気してた?』
電話の向こうの声は、やたら明るい男の声だった。なんとなく、聞き覚えがあるような気もする。しかし、電話の声なんて現実とは違っていてあまり当てにはならないのだ。きっと間違い電話か何かだろうから、適当に話を遮って切ろうとした。
「あー……すんません、多分間違い電話っす……それじゃ……」
受話器から耳を離そうとした瞬間、煩いくらいの、音割れした叫び声が聞こえた。
『あー!!ちょっと待って!!ちょっとだけでいいから!』
あまりの煩さが頭に来て、文句の一つでも言ってやろうとまた受話器を手にした。その時だった。
『もー……覚えてないの?確かに電話番号変わったけどさぁ……ほら、高校の時一緒につるんでた!』
そう言われて、ふと思い当たる人物が一人いた。当時は体格に恵まれた事もあって周囲から避けられていた俺に、唯一馴れ馴れしく絡んできた変な奴だ。言われてから聞けば、声もそいつと合致する。
「……弁当忘れて草食おうとしてた?」
『なんで声忘れてソレ覚えてんの!?そうだけど……!』
合っていたらしい。見知らぬ電話番号がソイツの電話番号に変わったところで、当初の疑問は拭えない。
「……で、何の用だよ。つかどこで俺の電話番号知った。」
そう、携帯番号ならまだ、昔の友人なんかを伝手に知ることもあるかもしれない。しかし、今電話しているのは家電。よほど身近な人物か、あるいは公的な機関とのやりとりにしか使っていない。
[ん〜?……秘密。まぁ細かいことはいいじゃん?それより、言いたいことあったから電話したの!』
露骨に誤魔化された気もするが、まぁいいだろう。アイツは俺の母さんと面識があったはずだ。きっと、そこからだろう。そう信じて、話を聞いた。
「……んだよ。」
『僕、来週そっち引っ越すから!んでお前と同居する!あ、これお前の母さんが決めたから拒否権無しね!それじゃ!』
一方的にまくし立てられ、電話はぷつりと切れた。やっぱり母さんか、とか、引っ越すのか、とかどうでもいい考えは浮かんだものの、一番重要な情報は中々飲み込めなかった。
「…………は?」
アイツの「伝えたいこと」は、どうやら俺に大波乱を持ち込んできたようだ。俺はしばらく呆然としたまま、受話器を置くことさえできないでいた。

テーマ:伝えたい

2/13/2026, 7:24:53 AM