無名氏

Open App

夢と現実

無機質な電子音によって、意識は現実へと引き上げられる。
どうやら夢を見ていたようだ。
──どんな夢を?
数秒前まで確かに像を結んでいた筈の景色は、思考を巡らせたそばからはらはらと崩れていく。
確かなことは、ただ漠然と「夢でよかった」と安堵している自分がいるということだけだ。

眠っている間に見る夢は、心が映し出す現実へのメッセージなのだという。
病気によって見やすい夢があるだとか、夢がきっかけで症状が出る以前に病気が見つかったとかいう話を耳にしたこともある。
記憶の彼方に追いやられてしまった夢もまた、自分に重大な何かを知らせようとしていたのかもしれない。
そう思い至ると、もう少ししぶとく記憶に残っていて欲しいものだ、とつい理不尽な文句をつけたくなってしまう。

12/4/2024, 12:52:22 PM