逆井朔

Open App

お題:岐路
 人生には幾つもの分岐点がある、とよく言われている。
 でも、実際のところ、それに気づくのは得てして、道を歩きに歩いて何かの気付きを得たその瞬間だと思う。
 「今思えばあの時のあの判断が今この時に繋がっていたな」とか、「あの時こうしなければ、こうはならなかったのに」などと振り返る時に初めて、そこに岐路があったのだ、とはたと気づかされることが自分の場合は多い。
 不審者に幾度となく遭遇したことで、異性そのものが気持ち悪く感じられるようになったこと。
 大切な人がいなくなった際に「魔女」にかけられた呪いのせいで、人を信じるのが少し難しくなったこと。
 大切な人がいなくなったことで、心にぽっかり空洞ができたこと。
 ピアノを弾き続けることをやめて、音楽の道が途絶えたこと。
 進学先を特殊な方向に決めたことによって、その後の人生の幅が狭まったこと。
 就職に際し、あまりイメージが湧かず推薦で進める楽な道を選び、その結果自分には致命的に向かないと気づかされて打ちのめされたこと。
 数えだせばきりがない。
 振り返って自分に通知表のような形で総合的な結果をまとめて返すのは、多分亡くなる頃になるのだろう。
 まだこの先の人生に岐路はあるのだろうか。
 もしもまだあるのなら、生き終えた後で、この道を選んで良かったと胸を張れるような道を一つでも歩んでいけたらいい。

***
執筆時間…7分

6/9/2024, 5:20:38 AM