年末。
久しぶりに帰った実家で、ゴロゴロしながらスマホをいじっていたときのこと。
『もういなくなりたい』
『私なんて生きてても意味ない』
SNSを眺めていたら、そんな投稿が流れてきた。投稿時間は5分前。
何気なく投稿主の名前を見て、私はガバリと起き上がった。コートとマフラーを雑に身につけて、家を飛び出す。
投稿主は、幼稚園からの幼馴染のカナちゃんだった。私が上京して以来疎遠になって、もう5年は会ってない。今は、SNSで繋がってるだけの間柄だ。
確か、まだ実家に住んでいたはず――。
記憶の中のカナちゃんの家へと走る。
頭の中を巡るのは、今走っている理由。小さい頃一緒に遊んだ思い出もそうだけど、一番は、高3の終わり。受験に失敗して浪人決定して、絶望してた私の手を握ってくれた、カナちゃんのぬくもり。「大丈夫だよ。」優しくて強い、言葉と眼差し。
私は、根拠のないその言葉に、カナちゃんの優しい力強さに、救われたから。カナちゃんが傷ついてどうしようもないときは、私がカナちゃんを助けようって思ったんだ。
きっと、今がそのとき。
左手に三角公園、カナちゃんの家までもうすぐだ、と思ったとき、公園のベンチにうつむき座る女性を発見して、私は急ブレーキをかけた。
「カナちゃん!!!」
叫べば、女性は顔を上げた。私の顔を見て、目を見開く。
「もしかして、アキちゃん……?どうして……?」
その目から、ポロリと雫が溢れ落ちた。
私は駆け寄り、思いっきり彼女を抱きしめた。
「受験のとき凹みまくって死にそうだった私を助けてくれたこと、今でも感謝してる!ありがとう!!」
彼女が身じろぐ。私は、構わず続けた。
「この5年、SNS見て、カナちゃんもどっかで頑張ってるんだと思って、私も頑張ってた!一緒に頑張ってる気持ちになってた!」
抱きしめた腕を緩めて、彼女の濡れた瞳をまっすぐ見つめて、私は、言葉を伝える。
「だから、大丈夫!!」
何の事情も知らないけれど。めちゃくちゃかもしれないけれど。それでも、あなたに伝えたい。
“私は、あなたに生きててほしい”
たったそれだけの思いを、力を込めて、言葉に乗せた。
10/7/2024, 11:45:39 AM