見知らぬ街 ――誰も自分を知らない場所に行きたい。よく虫が静かに鳴き出す深い夜にそう思う。 他人に誇れるような事はなく、ただ日々を自分なりにしがみつくように生きている。たまによくやれたと胸の内が明るくなっても、すぐにそれを曇らせる言葉や情報が目に飛び込む。自分の生き方と他人の生き方は違うと線を引けばいいものを、その線は歪んで、私の足元に絡みつく。 布団をぎゅうっと身体にまとわせ、見知らぬ街を想像しながら、私はゆっくりと瞳を閉じた。日々家
8/24/2025, 11:57:15 AM