部屋を出たら、昨夜の雨はもう上がっていた。
道端には、やけに清々しい青空を映した水たまりが、ぽつりぽつりと残っていた。
君は、ぴょん、と軽く跳ねてそれを避ける。
その身のこなしは、あまりにも軽やかで僕は笑ってしまったよ。
昨夜、あの部屋で見せた君とはまるで別人だった。
まるで跳ねるたびに、夜を一枚、一枚、と脱ぎ捨てて、夜を無かったことにしていくような。
ホップステップ、ジャンプでさようなら。
君は、じゃあね、と笑った。
僕はといえば、君の背中に追いつけず、ただその軽やかさに見とれるばかりだった。
君に伝えたいよ。
足元に残った水たまりが、まだ空と君を映し込んでいた。
多分あれは、君を忘れたくない僕のレンズだったんだな、もう二度とピントの合わない。
6/5/2025, 2:09:34 PM