夢魚

Open App

ひゅうひゅうと音がする。風の音だ。
星一つ無い、真っ黒な空の下に僕は1人だけ取り残されていた。
何も見えない暗い闇の中に僕はただ1人。
とても孤独を感じていた。でも怖くない。だってもうすぐあれが来る。
下の方から大きな音が聞こえた。ここには何度も来ている。
今日決めたんだ。ちゃんと今日こそ向き合おうって。

あまりにも周りが暗いから、自分が目をつぶっているかつぶっていないか分からなくなる。でも実際そんなことはどうでもいいのだけれど。

僕はゆっくり歩きながらまっすぐ進んだ、早くあれに近づくために
次の瞬間、僕は暗闇の中、地面から足を踏み外した。

風に身をまかせ僕の体はふわりと浮いた。心地よい瞬間。
ようやくあれが来たのだ、待ち望んだ死が訪れたのだ。

ひゅうひゅうと耳元で掠れた風の音が鳴り、大きな波の音が下の方で僕を呼んだ。

僕は真っ逆さまに冷たい水の中へ落ちていった。

【風に身をまかせ】

5/14/2024, 2:20:55 PM