#時を止めて
時を止めた街
第一章:時計屋の少年
街の片隅に、誰も気づかないような古びた時計屋があった。
店主はまだ十七の少年。名前はユウ。彼は祖父から受け継いだこの店で、毎日黙々と時計を修理していた。
ある日、店の奥に眠っていた一つの懐中時計が、突然音を立てて動き出した。
それは、祖父が生前「絶対に触れてはならない」と言っていた時計だった。
ユウは吸い寄せられるようにその時計を手に取る。
針が12時を指した瞬間、世界が静止した。
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第二章:止まった世界
外に出ると、すべてが止まっていた。
風も、鳥も、人も、時間さえも。
ユウは歩いた。誰にも邪魔されず、誰にも気づかれず。
止まった世界は美しく、儚く、そしてどこか寂しかった。
彼は気づく。
この時計は「願いを叶える代わりに、世界を止める」ものなのだと。
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第三章:少女の声
止まった世界の中で、ただ一人動いている少女がいた。
彼女はユウに言った。
「あなたも願ったのね。時を止めたいって」
「…君も?」
「私は、最後の瞬間を永遠に閉じ込めたかったの」
彼女の名前はミナ。
彼女は事故で亡くなった弟と過ごした最後の一日を、永遠に繰り返していた。
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第四章:選択
ユウは悩んだ。
このまま時を止めていれば、誰も傷つかない。悲しみも、別れも、来ない。
でも、それは「生きること」をやめることでもあった。
ミナは微笑んだ。
「私はもう十分。あなたは、進んで」
ユウは時計を見つめ、そっと針を動かした。
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最終章:再び動き出す世界
風が吹いた。鳥が鳴いた。人々が動き出した。
ユウは時計屋に戻り、懐中時計をそっと棚にしまった。
ミナの姿はもうなかった。
でも、彼女の言葉はユウの胸に残っていた。
「止めた時間の中で、あなたは本当の願いを見つけたのね」
ユウは微笑み、今日も時計を修理する。
時は止まらない。だからこそ、尊い。
11/5/2025, 2:35:30 PM