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「悪魔執事と黒い猫」二次創作

題名『未定』

「お父さんは、海の向こうへ行ったんだって」
パラソルの下、並んで海を眺めていた主様が呟いた。
「ひいおばあちゃんも、お隣のクッキーも。昔、お母さんが教えてくれた」
東の大地の一部の地域に、そのような言い伝えがあると耳にしたことがある。
「帰ってこないくらい、良いところなのかな」
ねえ、知ってる?と戯れを口にする主様の瞳は潤んで見えた。
「……私が旅をしたのは、大陸の中だけですから」
僅かな逡巡の後、そう返せば
「そっかぁ」
と笑って、ストローに口を付けた。
パレスの面々のはしゃぐ声が遠くに聞こえる。
「それなら、いつか行ったときは、どんな場所だったかルカスにも話さなくちゃ」
「お待ちしております。この海で、ずっと」
私の手を取った主様に小指を絡められ、されるがまま軽く揺らされる。
子供じみた誓いは、波の音に攫われ溶けていった。

8/23/2023, 2:59:28 PM