高校生の頃、あの人に手紙を書いた。
勇気を出して書いた手紙だ。
“私のこと、どう思ってた?好きだった?私は、多分好きだった。”
たった1行の手紙だ。この1行に、私は全部の思いを込めた。
ずっと、嫌いだと思っていた。ずっと、嫌いだと思うようにしていた。
本当は、貴方のことが好きだという事を認めて、そして貴方にも私を思う気持ちが何処かにあるんじゃないかって期待をする事が苦しかった。
そんな苦しみを、全部この1行に詰めた。
でも、渡す勇気は私には無かった。
結局、貴方とは小学校4年生のあの日以来話すことは無かった。
それから、私は28歳になった。貴方の顔も、もうすっかり忘れていた。歳をとったね……私も、貴方も。
棺の中の、顔を覗く。嘗ての顔がどんなだったかもうぼんやりとしか覚えていないけれど、全然知らない人みたいだ。
私、貴方に会うのがずっと怖かったんだ。
貴方が私を愛していないって知っても、私を愛してるって知っても、どんな顔をすれば良いのか分からなくて。
お母さんとの裁判で、貴方が親権なんていらないって言ったって聞いて、私はそれがずっとショックだった。
だから、私は貴方に合わないことで傷つかないように自分を守る事を選んだ。
でも、私ね覚えてるよ。私が夜中に泣いた時、優しく腕の中に包み込んで私を慰めてくれた事。
だから、私本当は分かってた。貴方が私を愛していたって事。私も、本当は好きだったって事。
何度も会いたいって言ってくれてたのに、結局会うことも、手紙を渡すことも出来なくて。私は本当に臆病だ。
ずっといつか渡そう、渡そうと思っていた手紙。今になって渡すなんて遅いかな。
でも、この手紙は貴方に届ける為に書いたものだから。
机の引き出しから、引っ張り出してきたんだ。
「左様なら。お父さん。」
さようなら。良い父親では無かったけれど、悪い人でも無かったと思うから。
きっと、手紙の行方は天国行きになるように、そっと祈った。
2/18/2025, 1:02:23 PM