あのスーパーであなたを見かけました
ジャガイモを手に取ったあなたの目は
気味が悪いほど光っていました
あなたの頬が濡れていくのを
僕はキウイの陰から見ていて
あなたの手から力が抜けて
半ば落とすようにジャガイモを売り場に置いた
「さっき先生を見たよ」
なんてことないようにそう言ったら
お姉ちゃんは目を見開いた
僕の部屋よりも白くて暗い
蛍光灯の下ではしゃぐ蚊たち
「そう」
その一言を返すために
お姉ちゃんがどれだけ頑張ったか
僕には見えたよ
お姉ちゃんがジャガイモで自分を殴ったのを
僕の目に映る本当は
口に出せばそれは間違い
でも僕が語らない本当は
あなたが消えるただの闇
お姉ちゃんの手にはきっと
あなたの柔らかい感触が残り
あなたの濡れたその頬には
お姉ちゃんの低い声が張り付く
お姉ちゃんはカレーを食べて
8時半に家を出た
10時頃にはきっとあなたと
みかんを頬張り笑うのでしょう
僕が見たこのひとつの事実を
僕が闇に放つとしても
僕にとっては間違いではなく
ただ世界が僕を罰する
それだけのことですから。
4/23/2024, 6:33:54 AM