黒髪ロングの、まるで絵に描いたような清楚系生徒会長。
彼女に憧れる生徒は数多く、毎日のようにラブレターや告白が絶えないらしい。
その度に彼女はほんのり眉を下げて断りの手紙や返事をしているそうだ。
そして言い回しもかなり丁寧で、決して相手を傷つけない言葉遣いにしているとのこと。
だから彼女を悪く言う人など滅多にいない。
だけどあたしは知っている。
一年二組の担任でもある数学の先生。その先生を見る目が違うことを。
あたしがそれを知ったのは偶然だった。
すれ違う瞳が彼女らしからぬ憎悪に塗れていて、思わず背筋がゾクッとしたのを覚えている。
不自然に固まったあたしを見て、彼女は優しい慈母のような笑みを浮かべ、人差し指をそっと口に乗せた。
口外したらガチでヤバいことになる。
そう本能が囁いたあたしは必死にコクコク頷いて逃げるように教室へ走った。このことはおそらく一生忘れないだろう。
彼女と数学の先生に何があったのかは知らない。知りたくもない。
ただ、彼女にも先生にもできるだけ関わりたくない。
触らぬ神に祟りなし。まだあたしは平穏に過ごしたいから。
5/4/2025, 2:29:07 PM