とある恋人たちの日常。

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 二ヶ月ほど前、仕事に行く前にバイクの隅ににゃんこたちが迷い込んでいた。
 これから寒くなる時期に放置していたら死んでしまいそうなか弱い生き物を放置できずに恋人と動物病院へ連れていった。
 
 ふたりとも仕事で家に居ない時間が長いため、うちでは飼えない。住宅事情もある。
 とは言え、放置もできないから動物病院を通して保護猫施設に預けることになった。
 
 休みになると時間を作って保護猫として預けたにゃんこたちに会いにいっていた。
 保護猫になっていたにゃんこたちは、拾った時に比べて良い環境、良い食事をしてきたのか愛嬌が溢れていき、少しずつ里親が見つかって家族ができていく。
 
 明日、最後のにゃんこたちが里親に引き取られる日。
 
 〝たち〟というのは、最後に残った二匹は常に寄り添ってずーっとイチャイチャしており、「二匹を離すなんて可哀想なこと出来ません!」と言う熱いお言葉を里親さんから聞いたとのことだ。
 
 里親さんが迎えに来る前に、最後の挨拶をさせてもらえることになって、にゃんこ達を撫でさせてもらうことになった。
 
 恋人とふたりでお邪魔して、それぞれでにゃんこを撫でていく。
 
「この子たちがしあわせなってくれるといいですね」
「そうだね」
 
 うちでも引き取りたい。
 そういう話しもしたんだけれど、やっぱり子猫を引き取るのは難しいとなった。
 
 あまり長居するのも迷惑になるので、早めに退散することにした。
 
 ケージに戻してから、にゃんこ達に手を振る。
 よく分かっていないにゃんこ達は、またイチャイチャし始めていた。
 
「ばいば〜い」
「しあわせになるんだよ〜」
 
 保護猫施設のご家族にお礼を伝えて家を後にすると、どうしようもなく寂しくなる。
 
 今の時点では飼えない。仕事もそうだけれど、住宅事情もある。
 だから、飼わない。
 そう決めたのは俺たちふたりだ。
 寂しくても飲み込まなければならない気持ちだった。
 
 俺は彼女の手を取った。
 
「そのうち……ちゃんと考えて引っ越そうか」
 
 〝ちゃんと考えて〟
 
 その言葉には、〝家族になったら〟という気持ちを込めた。
 
 家族になって、家族が増えて、家族を迎えて。
 
 そんな気持ちに気がついた彼女は、花のような笑顔を向けて大きく頷いてくれた。
 
 
 
おわり
 
 
 
二六一、バイバイ

2/1/2025, 1:29:54 PM