あの人の乗った飛行機よ、どうか墜ちてくれ。
皆が同じ方を見る中、私は一人そう願った。
私の心は既に堕ちていたのかもしれない。
名誉を抱えて出ていったあの人に、こんな願いを抱くなんて。
私はなんて愚かなのだろう。
私達はなんて愚かなのだろう。
分かってはいるけど、願わずにはいられない。
優しいあの人が誰かを殺める前に、あの人がいなくなってしまえば。と。
――だってもう終わりじゃない
何も聞かされてはいないけれど、
聞くことはできないけれど、
私達は終わっている。
もう勝機などないだろう。
ねえ、どうせ叶わぬ願いなら。
いっそ、あの人があの人である内に死んでしまえたらな。
なんて。
どうせ叶わぬ願いだったから。
やけに冷たい風の中、
落ちていく。
11/24/2024, 7:16:24 AM