ほむら

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目を覚ますと、視界に映ったのは白黒写真のように色の無い世界だった。自分だけが色がついていることが、この世界の異常さを際立たせている。この無色の世界から抜け出すために、辺りを探索してみても、何も手がかりが見つからない。

「あの、すみません」

俺は近くを通りかかった人に声をかけてみるが、こちらに反応する様子が無かった。無視されたのかな、と思いながら少し歩いて交差点に出た。人が多くてぶつかりそう、と思っていたがなんと俺の体は彼らをすり抜けてしまった。

(もしかして、俺は周りから見えていない…?)

そう気づいてしまった瞬間、自分の体から色が消え始めた。嫌だ、消えたくないと心で願いながら涙を流していると、後ろから抱きしめられる感覚で我に返った。振り返ると、色のついている彼女が後ろに立っていた。

「大丈夫、ずっとそばにいるから…」

彼女がそう言った瞬間、辺りが光に包まれた。眩しくて目を瞑り、次に目を開けた時には自分のベッドの上にいた。

「怖い夢でも見ていたの?かなりうなされていたけれど…」

心配そうに見つめる彼女を見て、俺はホッとした。周りも色がついていたので、あの無色の世界は夢だったことが分かった。

「えぇ、色のない世界をさまよう夢でして…自分が消えてしまうのかと」
「そうだったんだ…でも、私はずっと一緒にいるからね」

そう言って彼女は俺を抱きしめて、背中を撫でてくれた。俺にとって、色のある素敵な世界を教えてくれたのは彼女なのだろう。もし、出会うことができなかったら…なんて考えそうになったが、すんでのところで止めた。

テーマ「無色の世界」

4/18/2024, 10:41:59 AM