興奮冷めやらぬとは正にこのこと。劇的な逆転勝利の味が、眠気を全て吹き飛ばしてしまっている。耳の奥ではまだ歓声が響き渡っている。目を瞑れば、広大なスタジアムに立っているかのようだ。勝利を求めるのは、人の本能だと云う。今ならそれがありありと実感できる。脳からは何か快楽物質がドバドバと溢れている。身体は軽く、放っておけば宙に浮くんじゃないかとすら思えてくる。全能感に身を包まれ、自分がこの世の主役だと錯覚しそうになる。
「おい〇〇!」
強い光と、酒の匂いがする方から僕を呼ぶ声が聞こえる。みんなが僕の名を呼んでいる。
心地いい熱気に流されて、僕は光の中に飛び込んでいった。
「眠れないほど」
12/5/2022, 2:22:51 PM