『忘れられない、いつまでも』
秋の涼しい風が廊下を吹き抜け、緑茶の香りがふんわりと包んでいた。
壊れた人形のようにただじっと湯呑みを見つめる少年はその場を動かなかった。
その少年と近しい年頃の子がたまに彼に声をかけることはあれど、彼は身動きひとつしなかった。
湯呑みに紅く染まった葉が落ち、彼は目を丸くさせ、まるで、何かに驚いているような面立ちであった。
彼はゆっくりと瞬きをし、空の湯呑みを膝の上に置いた。
彼の手は震えており、滑り落ちる湯呑みは呆気なく割れた。
どこからか、鶯が鳴く声が聞こえてきた。
5/10/2026, 8:49:56 AM