聞き分け良くこちらの手を離すくせに、名残惜しげに見つめて後ろ髪は引きまくる。会える時間も頻度も限られるなか、別れ際までそうやって執着をあらわにする。とっくに覚悟は決まっているのだろう。自分も、おそらくこの人も。それでも好きに生きてきた大人二人、懐に潜り込むには覚悟の他に足りないものが多すぎた。この手の中にあるその手を思いっきり引き寄せ、全てを捨てて連れ出したらどうなるだろう。そんな空想を宙に飛ばし、今日も離れていく指先をただ見送っていた。
(題:届かぬ思い)
4/16/2024, 3:36:30 AM