その日は雨が降ってた。
いつもみたいに太陽を見る事は出来なくて、
彼は少し寂しそうだった。
「今日は太陽が見れなくて、残念だね。」
煽るように言ってみた。すると、
「別に俺は太陽が見たいんじゃ無いんだ。 太陽が照らす月が好きなんだよ。」
と言った。 月は夜の方が良く見えるのに、昼に見上げるものだから、不思議な人だ。
「昼に見える太陽の方が綺麗だって?」
「いやぁ、やっぱり夜の月の方が綺麗だよ。」
顔が思わず引きつった。
「やっぱり夜の方が好きなんじゃない。」
「まぁね笑 でもほら、あれだよ、夜は月が主役じゃん。」
舞台の主役を取れなかった私への当てつけなのだろうか。
「ムカつく。」
思わず声が出てしまったらしい。
「ごめんね。 君が主役やってるの見たかったのが、まさか仲良い人だけだとは思わないでよ。」
ふと、肩の荷が降りた気がした。
いつも遠くから私の事を見てきた彼は、私を通して舞台の主役を見てきたんだろう。
「次は、負けないから。 見てなさいよ、私が主役の舞台。絶対あんたに見せてやる。」
そう言ったら彼はいつも困ったように笑うんだ。
「うん、君が太陽になる日が楽しみだよ。」
8/6/2023, 1:15:52 PM