先輩は先輩で、僕は後輩だから、先輩の方が一足先に20歳になる。だけど、お酒を飲んでいる先輩も、煙草を吸っている先輩も、なんだかうまく思い描けない。先輩はシャンメリーの入ったグラスを回しながら、ココアシガレットを指先で弄んでいるのがよく似合うのだ。最大限カッコつけて、大人のふりをしている子供。だからこそ自由で、だからこそ美しい。
ひとりだけ先に大人になった先輩の隣に、子供の僕はいられるのだろうか。せめて、僕が大人になるまで、時間を止めて待っていてくれたらいいのに。
「先輩、1年くらいコールドスリープする気ないですか?」
「君も一緒に寝てくれるなら別にいいよ」
僕まで眠ってしまったら、その間に先輩に追いつく計画が台無しだ。「それだと意味ないんですよ」とぼやけば、先輩は残念そうな顔をした。
「夢の中でココアシガレットくわえながらジープ乗り回して、シャンメリータワーで乾杯したかったんだけど」
「……僕と一緒に?」
「君と一緒に」
単純な僕はそれだけで満足して、「いつか現実でやりましょうね」と約束を取り付ける。先輩は約束を破らないから、僕達は大人になっても馬鹿げた夢みたいなことで大真面目に遊び続けるのだ。
1/10/2026, 3:35:34 PM