美しい
煌びやかな豪奢なシャンデリア
赤く毛足の長い絨毯
色とりどりのドレスで着飾った 御夫人達
そんな風景を見ながら 玉座に座っている
ある一国の王子は、長々と溜息を吐いた。
「王子そんな顔して溜息なんて吐かないで
下さい 周りの人達に聞こえてしまいますよ....」隣に佇む従者が窘める。
「この中から未来の妃候補を選べと
王から直々に命じられて
その通りにしなければならない
私の憂いが分かるか
溜息位吐かせてくれ...」
王子は、広間のパーティーは、
始まったばかりだと言うのにもう
疲れた顔をしていた。
従者は、そんな王子の苦労も直に見て
聞いているので分からなくはないのだが...
しかし此処は公の場しっかりと
王族らしい振る舞いをしてもらわなければ
困る。
「皆様 お待ちですよ 挨拶をして来て
下さい」従者が促すと...
「分かっている...」王子は、最後の溜息を
吐くと玉座の椅子から立ち上がり
皆の元に足を向ける。
それを見て従者は...
(基本的に家の主様は見かけの美しさを
信用してないからなぁ...)と心の中で唱える
まぁそれも無理からぬ事ではあるのだが...
王宮の中は美しさに囲まれている様に
見えて その内部は打算や欲望が
渦巻いている
そんな環境に幼少期から触れている
主様の立場を考えれば見かけの美しさに
猜疑心を抱いても仕方の無い事なのかも
しれない....
しかしそれでも従者は、密かに願うのだ
いつかそんな頑なな わが主様の心を
溶かし救ってくれる御夫人が現れる事を...
そう想っているからこそ
主様の憂鬱を知りながら
積極的に王に取り付け
この妃候補のパーティーを企画したのだ
願わくば我が主様に素敵な出会いが
ありますように...
そう従者は心の中で真剣に祈りを
捧げた。.....
1/17/2024, 6:41:31 AM