『恋物語』
「やはり恋なんてくだらないな。この世でいちばん馬鹿げた物語だ」
あなたに一冊の本を薦めた。
私のお気に入りの恋物語。
リアリストのあなたには、少々非現実に甘過ぎてお気に召さなかったみたいだけれど。
「早いですね。もう読み終わったんですか?」
「君が僕に薦めてくれた本を、いちばんに読むのは当然だろ」
そう言って彼は私に本を返却する。
「僕は君と同じ景色を見たくて、こうして一緒にいるんだから」
甘過ぎてくだらない恋物語も、君とだから読めるんだよ。
嬉しいことを言ってくれた彼に思わず顔が綻ぶ。
次はどんな恋物語を、彼と読もうかしら。
5/19/2024, 9:29:10 AM