@grk1365126

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【刹那】

 開けた窓の向こうでは木漏れ日が姿を変え続けていて、半端に閉めたレースのカーテンは鮮やかに翻っていた。緑の匂い、とあなたは言った。芽生えた木々の、草花の、掘り起こした土の匂い。懐かしそうに微笑むあなたを、カーテンが隠す。
 それは一秒にも満たない時間だったけれど、どうしてだろう、ふたたび姿を現したあなたが、まるで知らない人のように思えたのだ。巡る季節の意味を知るあなたの笑みが、その横顔が、わたしからはひどく遠いところにあるもののようだった。そんなはずはなかった。手を伸ばせばあなたはそこにいて、きっと、数える間もなくその頬に触れられる。そう分かっていたのに伸ばせない手を、何も知らないわたしはただじっと、握りしめていた。そういう、季節だった。

4/28/2024, 11:47:51 AM