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からんからんと入り口のベルが鳴り、目当ての人物が入って来る。
「お待たせ」
「全然。私も今着いたとこ」
嘘その②。本当は30分前からいる。
「で、なに?いきなり呼び出して」
「単刀直入で悪いんだけどさ、あたし達もう終わりにしない?」
「…は?なに、何の冗談」
「冗談じゃないよ。本気」
嘘その③。本当は冗談にしたい。
「分かった、今日エイプリルフールだからそんなバカなことしてんだろ」
「別にエイプリルフールは関係ない。というかそもそもあたし達ちゃんと付き合ってるわけでもなかったでしょ。飽きちゃったの」
相手は私の一切揺れ動かない目を見て、悔しそうに顔を歪ませた後、目の前に置かれたお冷をがぶ飲みして立ち上がり、こちらに目をやることもなくお店を出た。
また、からんからんとベルが鳴る。
テーブルの上に置いている拳をじっと見つめる。
本当の本音は、彼のことを好きになりかけていた。でも相手がこんな私では、彼に迷惑をかけてしまう。
だから私は自分にも嘘をついた。"好き"を認めてしまって形が成される前に否定すれば、元に戻るだけだから。
これが、一番最初についた嘘その①。

4/2/2026, 4:39:43 AM