鏡
君の心はひび割れたビー玉のようだ、覗き込めばこの世が逆さまに映り君は欲しいものを渇望を否定し批判することで自分を守っているね、あれだね、ムーミン谷のお寂し山に住むというオロオロ、心が冷えていて愛だとか情けだとかそういうものが近寄るとその炎を消してしまうというやつだ。
そしてまた山に引きこもって独りが良いさと独り善がりに嘯いて、正義の味方気取りで裁いて石を投げるね投げた石は鏡に当たって鏡が割れる、そこに映る君の顔は歪んでいる。
根っ子まで冷え冷えと凍てつきボロボロと砕け散ってしまうのかい? 君はね、自分がブーメランを投げて自分に刺しているよ、君が批判して割れた鏡に映っているのは君だよ、名前無しカオナシさん。
名前無しのカオナシの気安さで無責任な正義の味方気取りで、他人の一生懸命や他人の好きに唾吐きかけていたら、ブーメランじゃなくて、君自身が閻魔様の前で舌を抜かれる気をつけたまえ。正しく優しく有りたいのだろう?
僕はね、君のように正しく有りたいとも優しく有りたいともあまり強く思はないんだよ、それよりもっと大切なことが有ると知っているから。
お寂し山のオロオロは、自らが自分を寂しい奴だ、つまらない奴だと知ることで知りすぎることで、ムーミンが、たった一人見せた彼への温かな言葉に心の氷を溶かすことが出来たんだ、ようは受け取り方受け取る心なんだよ、言葉も物語も文章もドラマも…好き嫌いは人間だもの有るけど、そう思うこと大事だよね。
親はいないから愛情不足になるのではない、親が居たって愛を受け取れない子は愛不足だそんなことも判らない? 親が居なくても代わりになる愛に恵まれた子は愛情を受け取るコツを覚えるが、親が居たって愛情を受け取れない子はいつまでも愛情不足だって泣くんだよ。受け取るのは、自分自身だ。
ここに昔のドラマの話を書こう
ある青年は、母親に捨てられたその母親は、まだ乳飲み子のその子を兄夫婦に預けて別の男と駆け落ちした。兄夫婦はその子を自分たちの子供たちと別け隔てなく愛情注いで真の親子兄弟のように育て25年の歳月が流れ、立派な青年に育った彼の元に実の母親から手紙が届いた受け取った育ての母親は差出人を見て胸が騒いだ我が子のように育てた青年の実の母親の名前だったからだ、けれど育ての母親は、そのままその手紙を青年に手渡した、もう25才になっている息子だ、判断はこの子に任せようと思ったのだ。青年は、義母から渡された手紙の差出人を見て突き返そうとしたが義母に遮られポケットの中に手紙を入れた、そして、その手紙を同居する義母の親友のシングルマザーに預かって欲しいと頼み手渡した、困った義母の親友だったが親友とその息子の関係を知る彼女は引き受けその手紙を預かった、そして夫の仏壇の引き出しに仕舞ったのだが、それを一人娘が見つけてしまう、娘は仄かに彼に好意を抱いていたものだから、宛名に彼の名があることで咄嗟に差出人を見てしまう、そしてその名前が女性名であることに、ひどく傷つき狼狽し偶然帰ってきた彼を問い詰めてしまうのだった、詳しい理由も聞かずに責められた彼は腹立たしさ紛れに手紙を破いて燃やしてしまうのだった。一部始終を娘から聞いた彼女の母親は、娘を怒鳴りつける叱られた意味が分からず憤慨する娘に母親は、
「どうして、彼が自分を捨てた母親からの手紙を母さんに預けたかその心を想像したことはあるかい?」と問うた。
「そんな、我が子を捨てる親の手紙なんて」
と、娘が言うと母親は 「じゃあ、お前ならそれで良いかい?後悔しないかい?少しでも気になったから渡されて直ぐ破り捨てずに、母さんに預けたのかも知れないと思わないかい」と娘に尋ねた。
娘は黙って俯いて灰になった灰皿の手紙を見た
母親は続けた、「常識や正しいこと悪いことを越えるのが人の心なんだよ、それを救うのが情けなんだよ」…みたいなやり取りをする。
遠い昔の大正生れのお母さんの話。
この物語は大好きで一説丸暗記しているってやつ、私は、この心を日本人のアイデンティティの故郷だと思っている。
この物語は祖母を思い出すからだ。
令和6年8月18日
心幸
8/18/2024, 1:23:54 PM