晴れた日なら毎日見ているお月さま
…見ている、はずだ
意識して見ていないから、記憶に残っていないだけで
毎夜毎夜そこにある
なんのかんのと特別な理由を付けないと、自分から見上げようとも思わなくなってしまったお月さま
やれひときわ大きな満月だ、やれ何百年ぶりの皆既月食だ、やれ生きてる間はこれっきりの見事なストロベリームーンだ…いや、正直に言おう
特別な理由があっても、見上げることがなくなってしまった
月を見る余裕も無いくらい、忙しない人生が始まってしまった
朝起きてから夜眠るまで、時には眠っている間さえも、常に何かに追いかけられている
――はやくはやく、いそげいそげ
なんだかよくわからないものに、ずっと急き立てられている
落ち着く暇もない、ゆっくりする時間が惜しい、休むくらいなら何かをしなくちゃ…ずっとずっと、追われている
だから、本当に気まぐれだったんだ
特に何か大きな意味があるわけでもなく、ほんとうに、思いつきで
なんとなく、ふと見上げた空を君と共有したくなった
手ブレは酷いし、構図もなにもあったもんじゃない、ひどくボケた月の写真
送ってから、自分は何をやっているんだろうって我に返った
『ごめん、今のナシ』
そう送ろうとメッセージ画面を開くと、君からの無言の写真
…まさか、自分が撮ったものよりも酷いものが送られてくるとは思わなかった
追加で送信されたメッセージには、お月さまと同じくらい明るい君の言葉
『こっちも見えてるよー🌙きれいだね✨️』
『どうしたの?』とか『なにかあった?』でもなく、同じように今見上げている空を送ってくれる
君はお月さまみたいな人だ
どんなに世界が目まぐるしく動いても、いつも通り、普段通りに笑顔で寄り添ってくれる
なにがあっても変わらずいてくれる君のそんなところに、急いでいた心がちょっとだけ落ち着く
『君と見上げる月…🌙』
9/14/2025, 1:16:28 PM