「優しさだけで、きっと」
窓際で、氷がパキンと鳴った。
目の前のクリームソーダは、溶け出したバニラが緑の海に白い絵の具を落としたみたいに混ざり合っている。
「クロ…」
声を掛けると、足元で丸まっていた黒い毛のかたまりが、めんどくさそうに、でも確かな体温を持って僕の膝に顎を乗せる。クロの鼻先は少し冷たくて、生きている匂いがした。
本当は、正論も理屈もいらない。
ただ、この淡い緑の泡が消えるまでの静寂と、言葉の通じない君が隣にいてくれること。
それだけで、世界は案外なんとかなる。
優しさだけで、きっと。
僕は今日を、そっと書き留めておく。
5/2/2026, 11:43:01 PM