いろ

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【風邪】

 目を覚ますと君の寝顔があった。僕のベッドに頭を預けて、すうすうと寝息を立てている。カーテンの向こうから差し込む夕日が、室内を優しい橙色に染め上げていた。
 隠していたつもりだったのに、どうして気がついたのか。いつのまにか額に貼られていた、既に生温かくなっている冷却シートを指先でなぞる。合鍵を使って勝手に家へと入り込み、一通りの看病をしてくれたらしい君の眠る姿をぼんやりと眺めた。
 多少の風邪くらい、放っておいたって構わないのに。いつだって一人で耐えてきたのだから、このくらい問題ない。それなのに君の向けてくれる優しさが愛おしくて、じわりと涙が滲んだ。
(おかしいな。何でこんなに、涙もろくなっちゃったんだろ)
 全部、全部、君のせいだ。君が僕に、誰かがそばにいる温もりを教えてくれたから。君が僕を、ただの人間にしてしまったから。君が僕の不調に気がついて世話を焼いてくれたことを、こんなにも嬉しいと思ってしまうんだ。
(ありがとう)
 重たい腕を持ち上げて、君の頭をそっと撫でる。そうしてもう一度、穏やかな微睡みへと思考を落とした。

12/17/2023, 3:43:52 AM